朝ごはんを食べれば痩せるのか、それとも太るのか?
オリジナルで簡単な、ヘルシー朝食メニューを作ろう!
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オリジナルで簡単な、ヘルシー朝食メニューを作ろう!
ダイエットの手法やいわゆる”常識”の中には、とてもよく知られているけれど根拠に乏しかったりわからなかったりする”神話”も多いもの。今回はその1つ「朝食抜き」ダイエットの是非を科学的に検証します。
ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。
「減量したいなら、朝ごはんを食べなさい!」っていう話、お聞きになったことはありませんか。実際どうなのでしょうか?
アラバマ大学バーミングハム校の研究者たちは、朝食と肥満※1の関係についてこれまでに出された92の報告を調査しました。
Andrew W Brown, Michelle M Bohan Brown, and David B Allison
Belief beyond the evidence: using the proposed effect of breakfast on obesity to show 2 practices that distort scientific evidence
AJCN. doi:10.3945/ajcn.113.064410.
結果、それらの報告は、朝食が肥満に対し影響を与えると主張していますが、実際、バイアス(偏り)があり、証拠がないことを指摘しています。ですから実 は、「朝食を食べるVS 朝食を食べない」という問題において、それが体重にどう影響を与えるかは、これまでの研究からはまだ明確な答えは得られていません。
これまでの研究で分かっていることは、
・朝食を食べない人が体重過多・肥満である可能性は高いが、体重過多・肥満である人が朝食を摂れば体重が減るかは不明
・いつも朝食を食べる人が朝食を摂るのをやめた場合に、体重が増えるかは不明
ということです。
それでは、朝食は私たちにとって、それほど必要ではないでのしょうか?2011年の厚生労働省の国民健康・栄養調査結果によると、20~30代の日本人男性の約30%は朝食をとっていないようですが、それでいいのでしょうか?
先日、ハーバード大学の研究者たちは、45歳から82歳の男性26,902人を対象とした16年間に及ぶ大規模疫学調査※2の結果、朝食を食べない男性 は、冠動脈性心疾患※3のリスクが27%も高いことを報告しました。さらに、夜遅く食事をする人は、しない人に比べて冠動脈性心疾患のリスクが55%も高 くなりました。
Leah E. Cahill, Stephanie E. Chiuve, Rania A. Mekary, Majken K. Jensen, Alan J. Flint, Frank B. Hu and Eric B. Rimm
Prospective Study of Breakfast Eating and Incident Coronary Heart Disease in a Cohort of Male US Health Professionals.
Circulation. 2013;128:337-343. doi: 10.1161
さらに、この報告では、朝食を摂らない男性は、朝食を摂る男性に比べて年齢が若く、喫煙者が多く、未婚でフルタイムの仕事を持ち、身体活動が低く、アルコールの摂取が多いことがわかりました。
また、ハーバード大学のチームは、46,289人の女性を対象にした約6年間の大規模調査の結果、朝食を食べない女性は2型糖尿病※4と診断されるリスクが20%も高いことを報告しました。
Rania A Mekary, Edward Giovannucci, Leah Cahill, Walter C Willett, Rob M van Dam, and Frank B Hu.
Eating patterns and type 2 diabetes risk in older women: breakfast consumption and eating frequency.
Am J Clin Nutr 2013;98:436-43.
以上の報告をまとめると、現時点で、「朝ごはんを食べれば痩せる」ということは証明されていなくても、「朝ごはんを食べるとⅡ型糖尿病や冠動脈性心 疾患のリスクが減る」ということは報告されています。そもそも、「朝ごはんが食べられる」ということは、アクティブで、健康的な生活を送っている証拠だと 思います。
朝食には、エネルギー、集中力を高める、インスリン※5、グレリン※6などのホルモンのバランスを整えるなど、さまざまな効力があります。「体内時計」を整えるには、朝食はとても重要な鍵となります。
朝は忙しくて、朝食を準備する時間がない方も多いと思います。何を隠そう、私も朝起きるのはとても苦手ですが、果物、ヨーグルト、ナッツや全粒穀物のパン など、簡単に食べられるものを利用しています。寝起きは、ぼーっとしていても、朝食後は、シャキッとして、前向きでアクティブになり、一日が楽しく過ごせ ます。みなさんも、是非、オリジナルで簡単な、ヘルシー朝食メニューを作ってみて下さいネ!
※1…WHOでは、身長からみた体重の割合を示す体格指数として「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で求められるBody Mass Index(BMI)の値が25以上を「overweight」、30以上を「obese(肥満)」としている。かたや日本肥満学会ではBMI=22の場合を標準体重としており、25以上を肥満、18.5未満を低体重としている。
※2…病気や健康状態の原因と思われる様々な因子(環境、遺伝、病因、行動等)を想定し、それぞれの因子がどの程度、病気や健康に慣用しているか、可能性を包括的・統計に調査するもの。
※3…心臓に血液を供給する冠動脈で血液の流れが悪くなり、心臓に障害が起こる病気の総称。冠状動脈の内側が狭くなり、心筋に必要な量の酸素が供給できなくなった結果、胸の痛みに襲われる狭心症(胸の痛みがない場合は無症候性心筋虚血と呼ばれる)と、冠状動脈の詰まりがひどく、心筋の一部の組織が壊死してしまう心筋梗塞が含まれる。虚血性心疾患もほぼ同義。
※4…インスリン(※5)分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病。一般的に「生活習慣が悪かったので糖尿病になった」と言う場合、この2型糖尿病を指す。日本では糖尿病全体の9割を占める。2型糖尿病が発症する原因は完全に明らかではないが、遺伝的に糖尿病になりやすい体質の人(遺伝因子)が、糖尿病になりやすいような生活習慣を送ること(環境因子)の両者が関与していると考えられている。
※5…膵臓に存在するランゲルハンス島(膵島)のβ細胞から分泌されるホルモンの一種。主として血糖を抑制する作用を持ち、血糖値が上がると分泌も増える。炭水化物を摂取すると小腸でブドウ糖に分解され、大量に体内に吸収されるが、ブドウ糖はエネルギー源として重要である反面、高濃度だと糖尿病等の有害な影響を引き起すため、インスリンの分泌によりその濃度(血糖)が常に一定範囲に保たれている。
※6…胃などから分泌されるホルモンの一種で、1999年に日本の研究者によって発見された。下垂体に働いて成長ホルモンの分泌を促進し、視床下部に働いて食欲を増進させる作用があるほか、循環器系やエネルギー代謝にも機能することが明らかになり、心機能の改善やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の栄養障害改善などに効果が期待されている。
■大西睦子の健康論文ピックアップ58
大西睦子ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。